中小企業診断士×アニメ業界

 

アニメ業界の制作会社は常に厳しい経営状況にあるという記事を一定の期間で目にします。

私は中小企業診断士という資格を有する身として

その様な憂いのある状況を改善するお手伝いができればと考えています。

 

ドラゴンボールやガンダム、幽遊白書、エヴァンゲリオン、機動戦艦ナデシコ、

カウボーイビバップ、星界の紋章、攻殻機動隊、涼宮ハルヒの憂鬱、コードギアス、

化物語、日常…などなど、メジャーなタイトルだけでこんなにも。

趣味がばれてしまいそうですが…

幼少期よりアニメの影響を色濃く受けて育った私にとっては、

制作会社がそのような状況であることに心が痛みます。

 

創発的・クリエイティヴな業界は、ともすれば独特な風土であろうと考えられますが、

アニメ制作組織もこの世に会社・企業・法人としての人格・形態で存立しています。

そのため、中小企業診断士・経営に関する専門家として「経営」という言葉のもとに、

アニメ制作会社における経営者の困りごと、経営改善は可能であると考えています。

 

まず、世界的なコンテンツとして需要が増加し続けているアニメ業界や、

アニメ制作会社をどの視点でどう捉えるかということから考える必要が有ります。

 

例えば、

コストカットのためにアニメーターを人件費の安い海外人材を起用していた…

そんなことを耳にしたこともあります。

実際に、エンドロールでは海外の方々のお名前が並んでいたのを記憶しております。

 

確かに、適切なステップの中で人件費にメスを入れること自体は問題ありません。

その判断が会社の財務状態を改善し、経営が安定する。

継続したアニメ作品制作が可能になってこそクリエイターの雇用を生み出します。

 

反面、マクロな視点では日本が世界に誇る競争優位のコンテンツスキルを流出にもつながります。

長期的には技術やノウハウを身に着けた海外が日本国内のアニメ業界を追い抜く可能性も。

これは技術力を背景に国際的に競争優位を保ってきたものの、人材や技術の流出、

近視眼的なマーケティングでその国際的な立場が著しく低下した家電業界と通じるものがあります。

 

話は逸れますが、世間一般的な感覚として、「アニメやゲームが好き」

と括られることも少なくないと感じるのですが、ゲーム業界ではどうでしょうか。

 

ゲーミングPCを必要とするハイクオリティなゲームや

まるでファミコンのようなドット絵でも爆発的人気を生み出す作品もあります。

 

つまり、需要者ニーズを満たす=価値のある作品というのは

必ずしも全方位的に高品質である必要はないということです。

 

少額の投資であっても、顧客ニーズに合致した作品であれば爆発的なリターンを生み出す…

ということを、アニメ制作会社がどの様に判断するかということでもあります。

 

アニメは必ずしも「千と千尋の神隠し」や「鬼滅の刃」である必要はないのです。

 

時代背景もありますが、前述のクリエイター海外発注の件でいえばどうでしょうか。

海外に求めるのは人件費抑制策のアウトソース先としてではなく、

ニーズを調査した上で国内にはない新市場開拓、

少額投資を行いリターンが見込める市場であるとの考えも検討できたかもしれません。

海外ではいまだに日本の過去作を再放送という形で親しんでいます。

ここにヒントがあるのではないでしょうか。

 

家電業界は海外開拓・顧客獲得に苦戦したのも事実です。

エナジードリンクの例なども含めて日本企業の海外展開における

マーケティング戦略がうまくいかなかった経緯も山ほどあります。

日本国内だけの視点ではなく、海外の視点を持ち合わせた、またはそれに気づく人材がいれば…

 

第三者視点がいかに重要か、ということです。

 

机上の空論で終わらない徹底的な戦略策定が必要であることは言うまでもありません。

これらを成功させるには、優先順位や取捨選択には経営のバランス感覚が必要であると考えます。

今後は

・取引・受注先依存度割合を見直し

・主体的な事業別経営資本投下割合の算出

・自社の日本国内外におけるポジション確立

これらをしっかりと見定めたうえで中長期的なビジョンを定める必要が有ると言えます。

 

日本のアニメ業界は間違いなく世界に誇れる優秀なコンテンツです。

これから先もそうであり続けるために、

各制作会社の経営判断の見直しが必要であるかもしれません。